井上実 絵画展 2023.11.16 thu - 12.2 sat

 

井上実は1970 年生まれ。

東京造形大学の絵画科に入学し、1 年で退学。フランスで絵画を習得することを目指し、留学します。

 

帰国後は、当時新しい表現が次々と現れ、議論されていた「現代美術」を強く意識しながら絵画の制作に取り組みますが、それは、本人の言葉を借りれば「自分の絵を描いている気がしない」、実感の伴わないものでした。

2000年に入ったことを時代の区切りと感じ、半ば強迫観念のようになっていた「現代美術であること」をやめ、自分の描きたいものを描きたいように描くことを決意します。

その後彼の作品は、制作過程で課題を見つけ、それを乗り越えるべく真摯に取り組みながらも、「絵作り」という作為を徹底的に排除するというものになります。

スナップで撮った道端の草叢を「描く」という行為のみで描き、修正や全体を見ての調整もしません。

そのようにして描かれた彼の絵画には、控えめな印象ながらも得体の知れない芯の強さがあります。

 

脱人間中心主義・ポスト人新世についての芸術論が盛んに取り交わされている昨今、井上があれほど挑戦しては押し戻され、結局は捨てたはずの「現代美術」の中にいつの間にか辿り着いていたことは興味深く、エキサイティングでさえあります。


本展は、現在Walls Tokyo のウェブサイトに公開されている井上実作品の一部を展示するものとなります。

この機会にぜひ、ギャラリーに足をお運びいただけましたら幸いです。