INTRODUCTING ARTISTS
Alfred Stieglitz
アルフレッド・スティーグリッツ
アルフレッド・スティーグリッツは、それまで記録メディアだった写真を芸術表現にまで高めた芸術写真のパイオニアである。 ドイツで写真科学を学ぶなど、10年におよぶヨーロッパ留学から帰国し、ニューヨークに住むことになったスティーグリッツは、保守的で社交界化したアメリカの写真界に物足りないものを感じ、孤立していった。そんなある日、雪の日の鉄道馬車の終着駅で馬に水を飲ませている馭者に出くわし、自身の心象と重なったのであろうか、その光景を小型のハンドカメラに収めた。そのような出来事からスティーグリッツは「ストレート・フォトグラフィー」*を志向するようになる。写真は絵画と違い、精神性を保持しながらも作家の主観によって歪むことなく目の前のものを客観的に捉えることができるという点で、写真が自立した芸術となり得ると考えたからだ。次第にスティーグリッツの理解者たちが増えてゆき、彼は1902年に「フォト・セセッション」を結成する。また、フォト・セセッションの活動のための機関誌として『カメラ・ワーク』を刊行。さらに、ニューヨーク5番外291番地に小さなギャラリーを開設。このギャラリーは、一般にその所在地から「ギャラリー291」と呼ばれている。このギャラリーでは、フォト・セセッションの写真家たちの他、パブロ・ピカソやマティスをなど当時のヨーロッパの前衛芸術も紹介し、また、デュシャンやピカビアなど、ニューヨークダダの拠点ともなった。 *「ストレート・フォトグラフィー」はスティーグリッツの写真表現上の重要な最初の主張であり、絵画的な写真表現の反発として位置付けられる。加筆や修正などを行なわず、写真本来の特性と機能を生かす手法をとる。主観を排除した客観的表現を重んじるという点でモダニズムの考え方が強く影響していると考えられる。
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